4.2章 成果を出す4ステップ

国王の元お墨付き大臣のダーヨ。今は占い師として活動している。

ダーヨに憧れ、師事する優しい中年男性チョンサ。

チョンサはひょんなことから猫の言葉がわかるようになり、三毛猫のムネマとは友人関係にある。

今日もダーヨの元に占いと言いつつ、人生相談をしにきた人がいるようだ。

最近多い、将来の悩みを抱えるお客さん

今日、ダーヨの元に占いと言う名の相談をしに来たのは若い女性であった。

相談部屋から漏れてくる声で、チョンサはあらかたその相談内容がわかってしまった。

その人は、前回来た人同様、将来が不安とのこと。

現状に不満はないが、この人もやはり、自分の好きなことで大成したいと思っているが、なかなかその芽が出ず、悩んでいるとのことだった。

ダーヨは言った。

「そうしましたら、具体的に、成果が出るようになる4つのステップを教えましょう。それは・・・」

ここは重要な箇所だ。そう思ったチョンサは相談部屋とチョンサがいる部屋のドアに耳をつけ、その内容をなんとか聞こうとした。

しかしドアにつけた反対の耳から、「にゃ〜〜ん」という聞いたことのある鳴き声がした。

振り返ると、そこには三毛猫のムネマが、空いた窓から入ってきているではないか。

「なんですか、ムネマさん、勝手に入ってきて・・・。今からいいところなんです」

小声でチョンサはムネマに話しかける。ムネマはそんなことはお構いなしの様子で、あくびをして言った。

「なんだよ、そんな変態みたいにドアに耳をつけて。なんだ、盗み聞きか?」

「べっ、別に盗み聞きじゃないですよ。ただ、ちょっといいアドバイスをしそうだから、ちょっと聞こうかなぁなんて」

少し焦るチョンサを尻目に、ムネマがぼそっと言った。

「それを盗み聞きと言うんだよ」

盗み聞きする4ステップ

幸いにも、チョンサとムネマが話をしている間に、その、成果を出すための4つのステップの話はまだされていなかった。

ダーヨが言った。

「自分の好きなことで成果を出すための4つのステップ。まず一つ目は、成功したイメージをありありと頭に思い浮かべることです」

「成功したイメージですか・・・」

あんまりしっくり来ていないようで、相談者の女性は言った。

チョンサとムネマは顔を見合わせた。

「なんだなんだ、なんの話をダーヨのおっちゃんはしてるんだ?」

混乱した三毛猫のムネマはチョンサに言った。

「人間が自分の夢を叶えるための方法について、教えているんです。
 一つ目は”成功したイメージをありありと思い浮かべること”だそうです」

「なんだ、別にそんな難しいことじゃなさそうだな。たとえばおれだったら、あの魚屋からサンマをかっぱらいたかったら、そのかっぱらうイメージをすればいいってことだろ、簡単じゃねえか」

”簡単じゃねえか”に答えるが如く、ダーヨは相談者に補足した。

「イメージするだけ?そう思ったかもしれません。しかしちゃんとイメージするのは難しいものです。心のどこかで”どうせ出来っこない”と思ってしまうのが、悲しいかな、人間というものです」

少し寂しげにダーヨは話した。

ドア越しにその話をこっそりと聞いているチョンサは、

「確かに、ダーヨさんの言う通り、イメージはできてもそれを本当にできると信じ切るのは案外難しいかもしれないですね。
 どうせダメだろうとか、この前もダメだったしとかそういうことを言い訳にして、ちゃんとイメージしていないかもしれません」と言った。

それを聞いたムネマも、

「確かに魚を魚屋からかっぱらうときも、前に失敗した店でもう一度かっぱらおうという気にはならねえな。やっぱりそれは失敗したイメージが、頭の中にこびりついているからかもしれねえな」

と、独りごちた。

ダーヨの話は続く。

「ちゃんと自分を信じ、成功イメージを確信できるところまで頭で想像できたら、第二ステップに続きます。それは、勇気を持ってそれを実行することです」

こっそり聞いている二人組、チョンサとムネマもひそひそと話した。

「確かにダーヨのおっちゃんの言うように、イメージしただけだと意味ねえな。魚屋から魚をかっぱらうイメージがちゃんとできたんなら、それを実行に移さねえとな。なにもしなければ、腹は膨らまねえ」

そう言うムネマを見ながら、「そんなに生きるために盗みを働くなら、もう少し彼にエサを与えようか」とチョンサは思った。

続いて三つ目、とダーヨは続けた。

「三つ目は行動した後、ちゃんとそれを振り返ることです。この振り返りをしない人が多すぎます。
 イメージした、勇気を持って行動した、ならその結果を振り返るべきです。ちゃんとイメージできた通りにできたのか、それともできなかったのか。できなかったのならなぜそれができなかったのかを考察する。自分の中で腹落ちさせることが重要なのです」

チョンサはそれを聞きながら、自分の中でも思い当たる節があった。

確かに衝動に駆られ、今までも行動したことはあった。しかしあまり振り返りをした覚えはない。

この振り返りをしないと、また衝動に駆られてしまい行動する。そしてその繰り返しになってしまうのだ。一度ピリオドを打つ意味でも、イメージし実行した後の振り返りは重要だと思った。

そして最後は、とダーヨは相談者の女性に話をした。

「最後は、それができた自分を褒めることです。悲しいかな、なかなか大人になると誰も褒めてくれなくなります。子どもの時は親や先生、年上の人たちが褒めてくれたでしょうが、大人になると途端に褒めてくれなくなります。
 ですから、ちゃんとイメージ、計画し、勇気を持って実行。そしてそのままにせずちゃんと振り返りをした自分を褒めてあげることが重要です。そうしないと、”自分”がそっぽを向いて、うまく動いてくれなくなります。
 今まで話した四つのステップを、自分の好きなことに対し行うのです。そうすれば成果は必ず付いてきます」

猫のムネマは今までの四つのステップを暗唱した。

「四つのステップ。イメージ、行動、振り返り、そして自分を褒める。なんだ、人間ってのはこんなことを考えながら生きていやがんのか。まったく面倒くさいことをするなぁ」

チョンサと一緒にドアに聞き耳を立てていたムネマであったが、少し拍子抜けと言った感じで、ドアを離れ、窓際にさっと飛び乗り、目をつむってしまった。

時刻は三時。ムネマはお昼寝タイムに入ってしまったようだ。

しばらくして相談者とダーヨは相談部屋から出てきた。

相談者の女性は、来た時よりもなにか収穫があったような顔で、事務所を出て行ったのであった。

その日のチョンサの日記

「○月○日 晴れ

あまりよくないことだとは思いつつ、ダーヨさんの元に占いに来た人の話を少し聞いてしまった。

この人も自分の将来に自信が持てないらしい。最近こういった相談をしに来る人が多い気がする。みんなどうしてしまったのだ・・・。

ダーヨさんは相談者さんに、成果を出すための四つのステップを教えていた。まず成功のイメージをしっかりと頭で思い描くこと、そしてそれを勇気を持って実行する。そしてちゃんと振り返りをする。最後にそこまでのステップをちゃんと実行した自分を褒めるというもの。

この流れを自分の好きなことに対し、愚直に行なっていけば成果は必ず出るというもの。

ぼくもこの四つのステップを意識して、明日から取り組んでみよう。

P.S.ムネマさんはいつも自由に事務所に来て、ひとしきり話してお気に入りの日当たりのいい窓辺で寝てしまう。なんて呑気な猫だろう。いや猫なんてみんなそうだろう。ぼくら人間くらいだ。こんなにいちいち意識して生きているのは。

四つのステップで頑張ってはみるけれども、ムネマさんを見習って適度にサボりつつやろう、緩急はだいじ、だいじ」

以上

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