4.6章 脱力のしかた
国王の元お墨付き大臣のダーヨ。今は占い師として活動している。
ダーヨに憧れ、師事する優しい中年男性チョンサ。
チョンサはひょんなことから猫の言葉がわかるようになり、三毛猫のムネマとは友人関係にある。
今日もダーヨの元に占いと言いつつ、人生相談をしにきた人がいるようだ。
チョンサ、ダウン
今日、せっかくまた、相談をしている場面に同席して良いということだったのに、チョンサはなんだか上の空であった。
最近は頑張る場面とあえて力を抜く場面と、両方作るようにしていたのだが、それでもなんだか疲れが取れていないような気がしていて、頭がぼーとしてしまうのだ。
何かをやっていても、どこか目はうつろで、人の話を聞いているのか聞いていないのか、よくわからない様子であった。
相談者はもう来ていて、何やら必死にダーヨに相談をしている。
しかしそれも今のチョンサにとっては、すごい他人事で、正直どうでもいい風に映ってしまっていた。
ふと窓を見ると、窓辺で猫のムネマがこれまた気持ちよさそうにくつろいでいる。
陽の光が気持ちいいのか、両目をとじ、丸くなってすやすやと寝ている。
と思うと、目をパチリと開け、あくびをしながら伸びをした。
そうしてまた目を閉じて寝てしまったのである。
これこそ、脱力というか、リラックスの境地というもののような気がした。
チョンサは自分を振り返ってみて、どうやら脱力すること自体を頑張ってしまっていたらしいことに気付いた。
休むことが苦手なチョンサは、ちゃんと「休むぞ」と意識しないと休むことができない。それを意識してしまっているからこそ、精神的にもリラックスができない状態が続いてしまっていたのであろう。
その日の相談も無事終わり、明日は休日であった。チョンサは足早にダーヨの事務所を退社し、家路に着くのであった。
体が動かない
休日のその日は、朝もなんだか心が晴れず寝過ごしてしまった。
子どもたちは元気に遊んでいるが、昨日に引き続き、チョンサはなんだかぼーとしてしまっていた。
その状態は夕方近くまで続いた。いつもはテキパキと家事をこなすチョンサだが、体が重く動かないため、妻が家事をこなしてくれていた。
申し訳ないと思いつつも、どうしても体が動かないので、ベッドで横になっていた。
体力はとうに回復しているはずなのに、体がぴくりとも動かなかった。
このまま動けなくなってしまったらどうしよう。そう思った時であった。
ふと自宅の窓辺を見ると、また猫のムネマがいた。全くプライベートなんてあってないようなものである。
「よお、チョンサ。また元気がなさそうだな。また頑張りすぎたか」
ニヤニヤと笑っているように見える。チョンサは少しムッとした。
「そんなおかしいことじゃないですよ。なんだか頑張りとリラックスを両方取るように、それこそ頑張ってしまったみたいで、少しダウンしているだけです。もう少しで回復します」
ムネマは手で毛繕いをしながらチョンサに言った。
「ふん、まあ動ける時は急に動けるようになるからな。六時になったら動き出せるとか、そういうもんじゃねえんだ。とりあえず回復して、その時を待つ。まあ回復する手立てはそれしかないな」
そう言って、ぴょんと窓から外へ出て行ってしまった。
外界に心を開く
もう日が傾き始めていた。まだ体は動かない。チョンサは目を閉じた。そうすると、外から小鳥の鳴く声がした。
ピーチクパーチク。なんだかおしゃべりをしているようだ。
その時なぜだかわからないが、チョンサは小鳥たちに応援されているような気になった。
チョンサ、頑張れよ、応援してるぞ。ピーチクパーチク。
チョンサは昔から鳥が好きだった。自由にどこまでも飛んでいける鳥。チョンサは空を眺めながら、そんな鳥を見るのが好きだったのである。
その鳥からなんだか応援されているような気がした。
そう思うと、なぜかチョンサは体が動くようになっていることに気付いた。
なんだったのだろう、ポイントは。それは時に応じて違うのかもしれない。
誰かから声をかけてもらえたことや、何か自分の好きなことに触れたときなのかもしれない。
いつ復活するかわからないのは、非常に不安である。しかしいつか必ず復活できる。それまではとりあえず安静にして、精神的、体力的にも体を回復させることが重要である。
あとは周りとうまく調和して、復活の兆しを掴むのが良い気がした。
日記:回復のしかたは、まだまだ難しい
○月○日 雨
ここ最近また頑張りすぎてしまったためか、体がダウンしてしまった。
ダウンといっても熱を出したりしたわけではない。なぜか体が動かなくなってしまったのだ。
ただ、比較的早く、一日くらいで復活できた。忘れないようにコツをここに書いておこうと思う。
まず徹底的に休んで体力を回復させることだ。物理的に体が疲れてしまっているので、よく寝てよく食べる。太陽の光を浴びる。適度な運動をするなど、いわゆる健康的と呼ばれることはやった方が良いように思う。
あと復活できるかはタイミング次第なことがある。今回ぼくはひょんなことから復活できたが、日によって違うと思う。ただこういう時は自分の中にふさぎ込みがちなので、周りに心を開くというか調和するような気持ちで心を開いてみると、いいふうな気がする。
次、会社行った際、ダーヨさんから「なんだか吹っ切れた様子で、顔が晴れやかですね。よかったですね」と言われた。やはり顔にも出ていたらしい。脱力とリラックス。なんと奥深いことか。ダウンしないように、回復のしかたをしっかりと学びたいと思う。
以上












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