「損失回避」を本当に人間は優先するのか?_53
損失回避とは、得するか損するかという場面になった場合、損しない方を取るというものだ。この損失回避の本能があったからこそ、人類はここまで生きてこられたという記事を読んだことがあったと思う。
しかし、果たして損失回避を優先するのだろうか。よく言われる話だが、なんだか腑に落ちないので、その真偽を自分として考えたいと思う。
金額で考える
例えば以下のようなゲームがあったとする。
あたりのくじを引いたら1万円、はずれのくじだったら0円のゲームがあったら、やるだろうか。
おそらく100人いたらほぼ全ての人が、「やる」と答えるであろう。なぜなぜこのゲームをやって損をすることがないからだ。
この時、期待値という考え方を導入してみる。
これはあたりとはずれの合計を、ゲーム数で割るとする。
例えば先ほどのゲーム(あたり1万円、はずれ0円)をゲーム①と名付けるが、これの期待値は、(1万円+0)÷1=1万円である。
次にゲーム②として、こんなのはどうだろうか。あたりだったら2万円もらえるが、はずれだったら1万円払わなきゃいけないというものだ。これだと、このゲーム②をやる人はかなり減るのだと思う。なぜならはずれを引くと損をするからだ。
しかしこの時の期待値も、(2−1)÷1=1である。ゲーム①と期待値は変わらない。つまり確率だけで言えば、結果は同じなのだ。
こう見ると、同じ結果でも損をする可能性が少しでもあると、人間避けるよね、だから損失回避の傾向があるよねという考えだ。
でもぼくはなぜかしっくりこない。本当に損失を避けているのだろうか。
こういうときは自分のよく知っている分野に例えて考えると、しっくりくる場合が多い。ということでぼくがよく知っているドラクエで考えていこうと思う。
ドラクエで考える
例えばドラクエで、ゲーム①と②を例えてみよう。
①であれば、あたりであればレベル1上がり、はずれであればレベルはそのままという形になるだろう。これだったら、ほぼ全ての人がこのゲーム①をするだろう。
そして問題のゲーム②。あたりであればレベルが2上がるが、はずれだとレベルが1下がってしまう。これだとどうだろう、やるだろうか。少し考えてみて欲しい。
考えてもらえただろうか。
お金の例えであれば、ここではゲームに挑戦しなかった。しかしこのドラクエの例えであればぼくはこのゲーム②に挑戦したいと思う。それはなぜだろう。
それはレベルが1下がることによるデメリットが小さいからだと思う。レベルが1下がっても別にまた敵を倒して経験値を積めばいいと思うし、まあ言ってみればテレビゲームの話だからそう難しく考える必要はないと思っているのかもしれない。
では、テレビゲームだから損失回避の行動は取らないのか、という話になってしまいがちだが、そんなことはないと思う。同じ期待値でもドラクエの世界で損失回避の行動を取ることがある。
それはこんな例である。もう二度と手に入らない伝説の武器を1つ持っていたとする。それをあたりだったら新しく違う伝説の武器を2個もらえるが、はずれだと1個手持ちのものを失う。そういうときはどうだろうか。ぼくはこのゲーム②に挑戦しない。なぜかというと、二度と手に入らない伝説の武器だから、失いたくないからだ。
ここで1つわかるのが、損するものに再起性や復活性、代替性がある場合は、損失回避の行動は起きづらく、逆に希少性が高い場合は同じ期待値でも損失回避の行動が取られやすいということだ。
最初の1万円の例だと、この希少性という効力が付加されていると思える。つまり、1万円というものに希少性があるため、そちらを優先しているということだ。これが明らかな理由として、同じ期待値でも1万円ではなく千円だったとしよう。ゲーム②はあたり(+2千円)、はずれ(ー1千円)となる。
このゲームだとどうだろう。ぼくはこのゲームをやりたいと思う。なぜなら千円なくなったとしても、自分にとってダメージが少ないからだ。
逆に1万円無くなるのはかなり痛い。だから、同じ期待値だったとしても、その大きさによって、挑戦するかどうかは異なる。
そういった意味だと、最初の例だと、期待値1万円、次の例だと期待値1千円になって単位が変わっているので、期待値の大きさによって、判断を変えているといえると思う。
このように考えてみると、別にマイナスだったら全部回避、というわけではなくて、メリットデメリットを鑑みて、どちらが自分にとって得か、という「得を取っている」ともいえる。逆に「損しないようにしている」ともいえ、別に得とか損とかというわけではなく、天秤にかけた時にどちらが自分に取って利益があるのかで判断しているといえると思う。
まとめ
もしかするとマーケティングに詳しい人から見れば、「いやいやそうじゃないよ」というところもあるかもしれない。その場合はぜひコメントで教えてほしい。
今の段階のぼくのまとめだと損失回避という損失ばかり避ける方向にあるのではなく、なにが自分にとってメリットがあり、デメリットがあるかを総合的に判断して、生きている(少なくともぼくは)、という点である。
以上。
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