(70) 後ろめたさとはなにか

相手に対し迷惑をかけてしまったと思った時、相手に「悪いな」という感情が芽生える。

そして代替の方法として、何かでそれを埋め合わせをしようとする。

しかし、何か相手に迷惑をかけて後ろめたさがあったとしても、埋め合わせをしていいものと、してはいけないものがあると思う。

どうしてもそれをすることがはばかれる理由があるときは、無理にそれを強要されても、やらなくていいと思う。

しかし、なぜ相手に後ろめたさを感じた時は、他のことで代替しようとするのか。

返報性の法則

この世の中には返報性の法則と言って、いいことをしてもらったら、何かお返しをしないと気が済まなくなるという、人間特有の心理現象があると思う。

これが利用され、相手に悪いことをしたらいいことでその埋め合わせをしないといけないという感情に囚われるのだ。

こういう感情になってしまうのは、人間だから仕方のないことだ。天秤でうまくバランスが整っているのに片方が重くなって偏ってしまったら、もう片方も重くしてバランスを保とうとするのと同じだ。バランスが保てていないと、非常に居心地が悪い。

その際、相手から、自分にとっては都合が良くないもので、代替するよう要望されたとする。その際は本当はそれをしたくないのだけれども、自分のせいでバランスを崩してしまっているので、その要望には答えなくてはいけないと思ってしまう。

しかし、ここで考えておかなければいけないと思うのが、本当にそれを自分はしたがっているのか、という点だ。できればそのことはしたくないのだろう。しかし後ろめたさがあるからそれを代替するためにそれをするのだろう。

図示すると以下のようになる。

人はどのようにして、判断を下しているのか

ここで考えた方が良いことが、人はどのようにして、日々の生活の中で、判断を下しているのかということだ。

ぼくの持論はこうである。人はメリットとデメリットを差し引きして、その差分が大きいものを選択しているのだと思う。

さっきの話だと、デメリットを50発生させてしまって、本当はやりたくないけど、相手から要望された物を提供することで、相手と良い関係性を築けるというメリットを50発生させることができるので、この相手から要望される物を提供し、50−50の関係性を構築するというロジックが、頭の中で働いている。

一見、この商売は成り立っていると見られる。デメリットが50発生してしまったから、自分のやりたいことではないが、メリットが50発生するもので、その埋め合わせをしている。

しかし、ここで重要なことが発生していることを、見過ごしてはいけない。それはそのメリット50を発生させるために、自分が本来やりたくないことをやっているということだ。

ではどうすればいいのか。メリット50を捨てるか?いや一番いいのはメリット50を発生しつつ、自分がやりたいことをすべきだろう。つまりメリット50を発生させる、別の手段を検討・相手に提案すれば良いのだ。

なぜ相手はそのメリット50を発生させる手段Aを求めるのか。自分にとってその手段Aは取りたくない。しかし、メリット50は発生させたい。二兎を追うならば、それなりの汗をかかなければいけない。それをするためにメリット50を発生させる、代替手段Bを考えなければいけない。

そしてその自分でも納得ができる代替手段Bで相手と交渉をしていくべきだと思う。

メリット50を手に入れるため、本来は自分が望まない手段Aを受け入れるのは、一見簡単だが、これに慣れてしまうと、もう相手の言いなりになってしまう。

相手との交渉はきつい。ぶち当たるのだから摩擦は当然起き、気力と体力を消耗する。しかしこれをやらないと、自分は相手の言いなりになってしまう。心を鬼にして、相手と立ち向かっていく必要性がある。相手の言いなりになってしまうのは一時的に何も考えなくて良くなるので心地が良いと脳は感じるが、長期的に見れば恐ろしい選択をしているのは明らかである。相手が消えろと言えば消えてなくならないといけなくなる。自分での自由意志がなくなるということがどれだけ怖いことか。

相手に懐柔されるのは何も考えなくて済むので楽だ。考えるのは大変なことだ。労力がいる。しかし考えるからこそ、最適な手段を考えつくことができる。何かを失うということは、何かを得ているということに等しいのだ。

相手と距離を取ること、すなわちそれは自分を持つということだ。

そして自分を持てば、相手とぶつかったりすることもある。別にそれは悪いことではない。当然のことだ。

だから対等な立場としてそれは接すればいい。一時的にバランスが崩れても、変に妥協して自分が望まない手段は取らないほうがいい。

取るということはそれは対等な立場ではないということになる。もし自分が手段Aを望まないと言って相手がそれを許容してくれないとすれば、相手は相当困っているということだ。そういう時は手段Aは取れないが、手段Aが欲しがる理由を聞いて、自分が納得する手段Bを提案すればいい。手段はAだけではなく、Zまであるかもしれないのだから、手段を取る理由をしっかりと把握した方がいい。それが根本的な解決につながる。

以上。

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