オリジナリティの境界線はどこか

今回はまた著作権絡みで考えていきたいと思います。昔、「みずみずしいすいか事件」というものがありました。すごくユニークな事件名ですよね。名探偵コナンで出てくる事件でも、こんなユニークな事件名はないでしょう。

みずみずしいすいか事件とは

この事件は平成11年に第1審で争われたもので、AさんとBさん、二人とも同じような写真を撮りましたが、BはAの模倣(パクった)、つまり著作権を侵害したとして、訴えられた事件です。

まずは問題となった写真を見てみましょう。

法学教室 2007 Apr No.319 有斐閣 P.163

どうでしょう。見てもらっての感想は。

私は、まあそっくり、という感想です。確かに、左と右とではまずスイカの傾いている方向が違います。左の写真は右の方に傾き、右の写真は左の方向に傾いています。

あとは、バックにあるスイカ本体も、左の写真は二つ、右の写真はどうやら三つあるように見えます。

白黒なのでわからないですが、実は背景がブルーでグラデーションがかかったものになっていて、それはすごく似ています。

あとは左の写真はスイカの前に氷が敷き詰められていますが、右の写真には氷がありません。

なんだか間違い探しみたいになってきましたね。

ではここで裁判所の判決を見てみましょう。

判決も割れる

まず地裁の判決では、「被写体の選択、配置上の工夫」が似ているくらいでアイディアが共通しているだけということで、著作権侵害には当たらないとしました。

しかし高裁では、「被写体の決定自体について、すなわち、撮影の対象物の選択、組合せ、配置等において創作的な表現がなされ・・・ることは、十分あり得る」として、Xの写真には著作権があるため、Yの写真はXの著作権侵害だとしたのです。

私の見解

もしカラーで写真を比較したいという方がいれば、ネットで、「スイカ事件」とググってもらえれば、当時の写真がたくさん出てきます。(ここにそれらを載せると無断転載になってしまうので控えます。上記に載せた白黒写真はいいのかという話もありますが、それは「引用」ということでご勘弁ください)

さて、みなさんは二つの写真を見て、著作権侵害だと思いますか?

裁判所は結局高裁にて、侵害だという判決を出しましたが、私は、別にこのくらいだったら、侵害とは言えず、アイディアに留まるレベルなんじゃないかなというのが私見です。

確かに似ていると言えば似ているけど、別にスイカを切って並べるのは普通のことだし、バックをブルーにするのも、スイカを食べる夏の日だったら、青空でしょうとか、普遍的なことが多いと感じるからです。

Xの写真に著作権が認められてしまうと、スイカを切って青空バックに撮った写真は全て著作権侵害になってしまいます。

それに前に書いたように、微妙にXとYとでスイカの傾け方だったり、違う部分があるので、類似性を見分けるのも難しいでしょう。

それではここで、写真の類似性などの著作権侵害について、もう一つ事件を見て、考えてみましょう。

スメルゲット事件

これもまたなかなかにユニークな事件名です。これはスメルゲットという商品の写真の著作権侵害について争われた事件です。

法学教室 2007 Apr No.319 有斐閣 P.165

地裁では「本件商品を正面から写しただけの平凡なもの」として、創作性を否定しました。

一方高裁では「被写体の組合せ・配置、構図・カメラアングル、光線・陰影、背景等にそれなりの独自性が表れているということができる」として、創作性を肯定しました。

まあ確かにあえて二つの商品を並べたり、少し中央に傾けたりするところには創意工夫を感じるところがあります。

しかし著作権の困るところが、一度著作権を認めてしまうと、そういった写真を撮ると「著作権侵害だ!」と訴えられてしまい、いちいちその許可を著作権者に求めなければいけなくなる、ということです。

著作権の難しいところ

やはり著作権を勉強していて難しいな、と思うところは、人が作ったもの=著作物、と決めてしまうと、何でもかんでも著作物になり、同じものを作った時に、それを最初に作った著作者にいちいち許可を求めなければいけなくなる点です。

ただ、そうやって許可を求めるのが面倒だからと、著作物として認めなさすぎると、今度は著作者のやる気というか創意工夫を凝らして作品を作ろうとする気概を削ぐことにもなりかねません。

この二つの点をトレードオフに考えるところが、著作権の難しいところだと感じます。

オリジナリティとは?

タイトルにもあります、オリジナリティの話に戻ります。

すいか事件も、スメルゲット事件も、写真の著作物として認められた事例です。

そしてすいか事件に至っては、Yの写真はXの著作物の侵害として認められてしまいました。

しかしYがXの写真を一度も見たこともなく、本当に自分の意思と創造だけで作った写真だったとしたら、Yはオリジナリティを持っていると言えると思います。

そしてたまたまXの方が先に撮影しており、様々な点で類似性が認められたため、著作権侵害となってしまったのだと、私は推測します。

私も写真愛好家として、いろいろな写真を撮ります。たまに、ブツ撮りといって、商品を置いて、ライティングなど設置し、撮影する時もあります。

この時、Aという商品を選択し、構図を決め、ライティングを決め、カメラを設定し撮影する。その結果としての写真が他で撮られた写真と類似するということは、おそらく発生してしまうんじゃないかと思います。

その時、自分が撮った写真にオリジナリティがないのかと聞かれれば、少しむっとします。自分は完全に自分の考えに基づき写真を撮ったと思っていますので、完全オリジナルの作品だと考えています。

しかし一方、今まで様々な写真を見て、そのデータベースは頭の中に蓄積しています。そういった意味だと、それらの写真からパクっている、引用している、発想していると言えなくもないです。

ただ、どこからがオリジナルか、オリジナルではないのかというのは大変難しい話なので、もう少し考えてみたいと思います。

私はこのブログを書いて、土曜日に配信していますが、その翌週の月曜日には、このブログのテーマを主に、ポッドキャストでも話をしています。

そこでもつらつらと話しつつ、文字にはできなかったオリジナリティについて考えてみたいと思います。

もしよろしければ、少し日が空いてしまいますが、お聞きいただけますと嬉しいです。

今回は以上となります。ありがとうございました。

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