(112) 昔話「じゃんけん」

むかしむかしあるところに、パーくんと、チョキおと、グー爺という3人がいました。

パーくんは非常に開放的な性格で、誰とでも仲良く、誰にも平等に接する、いわゆるいい奴でした。

しかしちょっと考え方がふわふわしていて、頼りないとも見方によっては見えました。

そしてチョキおはひどく攻撃的で、言葉遣いも荒かったのでした。その荒っぽさで、時には人を傷つけることもありました。

しかし彼にかかると物事が非常にわかりやすく整理整頓され説得力があり、見ていて気持ちのいいものがありました。彼のプレゼンにかかれば、どんなものも一級品に見えるから不思議です。

そして最後にグー爺ですが、グー爺は頑固でなかなか自分の考えを変えません。またずっとこもりきりであまり人と話しているところを見たことがありませんでした。

しかしグー爺は最初に決めたことは最後まで突き通す強い意思を持っていました。

そんな3人は性格がバラバラながら、なぜか気が合っていました。

しかし時にはケンカもします。その日はチョキおがひどい言葉でパーくんをなじっていました。

パーくんは傷つきやすく言葉をそのまま受け取ってしまう純粋さもあったので、チョキおの言葉にひどく傷つきました。

そういうときは年長のグー爺が出てきて、チョキおを怒るのでした。チョキおもグー爺には圧倒されてしまい、しかも何を言ってもグー爺は微動だにしないため、まさに歯が立たず、最後にはグー爺に降参し、パーくんに謝るのでした。

パーくんはいろんな人を包み込む優しさがあったので、それをグー爺は認めていました。

こういう風にとても3人でいるとバランスよくいることができました。

しばらくすると残念なことにグー爺が亡くなってしまい、パーくんとチョキおしか、いなくなりました。

こうなるとどうしてもチョキおが優しいパーくんを責めることが多くなってしまいました。

なんでこれができないんだ、あれができないんだ。役立たずめ、までは言いませんでしたが、全てをパーくんのせいにすることもしばしばあり、パーくんはすっかり参ってしまいました。

そんなとき、グー爺の孫の、グー子がよく2人と遊ぶようになりました。

グー子はグー爺と違い、よく動く子ではありましたが、グー爺によく似て非常に意思が固く、しかもその意見が大人顔負けに筋が通っていて、感心するほどでした。

正義感の強いグー子は、パーくんをいじめるチョキおを見てられません。なんでそんなことをするの、パーくんが言い返してこないことを理由に、いじめているだけじゃない。弱いものいじめをするのは最低だよと。

チョキおは注意されると脆いところもあり、グー子にそう言われると、ぐうの音も出ませんでした。

実はグー子はもっと小さい頃、優しいパーくんによく遊んでもらった記憶があり、パーくんをとても慕っていたのでした。

そんなとき、グー子の姉の、グー美も遊びに加わるようになり、その代わりにパーくんはどこか別のところで遊ぶようになりました。

なので、チョキおと、グー子とグー美の3人で遊ぶ形です。

グー美は黙っていることが多く、そしてグー子は意志が固く、物事をズバズバと言ってきます。だんだんチョキおはこの2人と遊ぶのが億劫になってきました。

そんななか久しぶりにパーくんが遊びに入り、グー子とグー美の面倒を見るようになりました。

いつも強い口調でパーくんに当たっていたチョキおでしたが、この時以上にパーくんに感謝したことはありませんでした。

パーくんと、チョキおと、グー子。3人が3人とも性格が違うからこそ、バランスが取れる。

そして、その均衡が少しでも破れると、途端にそのバランスが悪くなる。3という数字はとても不思議なものなのです。

以上

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