オリジナリティの境界線はどこか②

前回に引き続き、写真における著作権侵害の裁判所の判例を元に、どこからが写真としての著作物性が認められるかを考えていきたいと思います。

事例1:廃墟写真事件

この事件は廃墟の写真を撮ったX氏が、同じ被写体である廃墟を撮って、その写真を書籍にして出版したY氏に対し、A氏の写真の複製や翻案だということで、著作権侵害として訴えた事件です。

著作権判例百選 第6版 小泉直樹・田村善之・駒田泰土・上野達弘 有斐閣 P.110より引用

「廃墟写真事件」と検索すると、元のカラー写真が出てきます。それを見ても、私の感想としては「そっくりだなぁ」というか、おそらく同じ場所から撮られた写真だろうなということは推測できます。

これの判決ですが、第1審でも控訴審でも、X氏は敗訴しています。

裁判所判決

第1審では、まず、廃墟を選んだことはアイディアであって、そもそも表現ではないと裁判所は言っています。

また、XとYの写真では似ているところは多いけれども、左下にススキが写っているのか違う植物なのかとか、Xのものは逆光気味であるがY氏のものはそういうテイストではないなど、XとYとで写真から受ける印象は異なると言っています。

つまりX氏は似ていると言っているけれど、そっくりそのまま同じとは言えないので、これは著作権侵害(パクった)ではないという判決だったということだと思います。

控訴審でも同じような形で控訴棄却となっています。

個人見解:撮影ポイントの見つけた者勝ちなのか

結果として、これはパクったとは言えないという判決となりましたが、これが「パクった」と認定されなくて、ホッとしています。

もしこれがアウトだと言われてしまえば、その撮影ポイントを見つけた者勝ちとなるでしょう。

なんとなく著作権の世界は、「早い者勝ち」「見つけた者勝ち」の観点が強いように感じます。

ただし不安な点は残ります。これは裁判所の判決としてX氏が負けたのが、X氏が「似ている」と言っていたのに対し「似ていない」という判決だったため、X氏が敗訴しているということです。

もしこれが写真の構図以外に、光の加減や植物の配置など、ピッタリと一致していたら、判決はどうなっていたのでしょうか。もしかしたらX氏は類似性が認められ、勝っていたかもしれません。

ということは、やはりその撮影ポイントを早く見つけたものが、その著作権を取ったのも同然ということです。

もちろん、そもそも廃墟を撮る時点ではアイディアなのだから、廃墟を撮る写真が全て類似性が認められ、著作権侵害になるとは言われないと思いますが、なかなか怖い話だと思います。

事例2:民家の暖簾事件

次は写真ではなく絵なのですが、考えていきたいと思います。

合掌造りの建物を描いた絵が問題になった事件ですが、両方とも民家を描くという点では同じです。

法学教室 2007 Apr No.319 P.163 著作物性(1)総論 上野達弘 より引用

実はこれ、民家と寺(どちらかがお寺のようです)を具体的にどう描くか、畑や木立の位置関係、大きさのバランス、構図といった表現方法に共通性が見られるとして、著作権侵害として認められてしまったのです。

これについて注意しなければならないのが、合掌造りの田園風景を描くという「アイディア」がだめだったという話ではなく、その表現について、明らかな類似性が認められたため、著作権侵害となってしまったという点です。

先ほどの廃墟写真事件では、アイディアは似ていてもOKでしたが、表現方法に類似性が認められなかったため、原告の主張は通りませんでした。

表にすると以下の通りになると思います。

著作者の権利を守ろうとする傾向を感じる

この二つの事例を見て感じましたが、やはりアイディアを表現した際、その第一人者となった人を守ろうとする傾向が強いように感じます。

民家の暖簾事件を見るとわかるように、田舎の田園風景を描くこと自体のアイディアはセーフでした。

しかしそれを”絵”として表現した時に、最初に描いた人に対し類似性が認められる絵を描いてしまえば、著作権侵害になってしまうわけです。

絵の模写や、写真については、撮影ポイントが同じであれば、例えば写真だった場合、オートモードで同じ場所で撮影したのであれば、どの写真も撮る人が変わっても、全く同じに撮れるでしょう。

ここでやはり大事なのが、著作物として認められる要素の1つである、「創作性」という部分です。これがないと著作物として認められないため、この部分をどう強めていくかが、これからの著作物の未開の地を開くための大事な要素になってくると感じました。

今回は以上となります。ありがとうございました。

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